Firewall からインターネットに SNAT して通信する時のパブリック IP の使われ方

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こんにちは、Azure テクニカル サポート チームの薄井です。
今回は Azure Firewall に関連付けたパブリック IP の SNAT 時の使われ方について紹介します。

Azure Firewall のパブリック IP による SNAT について

Azure Firewall を経由してインターネット宛に通信するときは、関連付けられているパブリック IP へ送信元のアドレス変換(SNAT)が行われます。パブリック IP が 1 つしかない時はそのパブリック IP のアドレスしか使用されませんが、複数のパブリック IP アドレスが Azure Firewall に関連付けられている場合の動作について、以下のドキュメントではランダムに選択する旨の記載がございます。

Azure PowerShell を使用して複数のパブリック IP アドレスを使用する Azure Firewall をデプロイする

SNAT -送信 SNAT 接続に追加のポートを使用できるので、SNAT ポートが不足する可能性が低減されます。 Azure Firewall では、接続に使用する送信元パブリック IP アドレスがランダムに選択されます。 ネットワークにダウンストリーム フィルターがある場合、ファイアウォールに関連付けられているすべてのパブリック IP アドレスを許可する必要があります。 この構成を簡略化するには、パブリック IP アドレス プレフィックスを使用することを検討してください。

この記載は通信ごとにランダムにパブリック IP が使用される、つまり確率的に関連付けられている全てのパブリック IP が均等に使用されるかのように読み取れますが、実際のパブリック IP の使われ方は、基本的にプライマリのパブリック IP から使用されることが多く、そのパブリック IP が継続して使用される傾向があります。つまり、全てのパブリック IP が均等に使用されるようなふるまいではありません。

通信先への送信元 IP アドレスを分散させたい場合には NAT ゲートウェイが必要となります。

NAT ゲートウェイ による SNAT について

Azure Firewall Subnet に NAT ゲートウェイを関連付けることにより、Azure Firewall のパブリック IP ではなく、NAT ゲートウェイで SNAT を行うことができるようになります。NAT ゲートウェイによる SNAT では関連付けられているパブリック IP がランダムかつほぼ均等に使用されます。
注意点として、NAT ゲートウェイはゾーン冗長をサポートしていないため、利用する場合は Azure Firewall をゾーン冗長しないようにデプロイする必要があります。
Azure Firewall と NAT ゲートウェイを組み合わせて使用する方法については以下のドキュメントをご参照ください。

Azure Virtual Network NAT を使用した SNAT ポートのスケーリング | Microsoft Learn

チュートリアル: ハブ アンド スポーク ネットワークで NAT ゲートウェイと Azure Firewall を統合する - Azure Virtual Network NAT | Microsoft Learn

Azure Firewall と NAT Gateway の比較表

以下の表は Azure Firewall のパブリック IP による SNAT と NAT Gateway の機能比較表です。

機能 Firewall のパブリック IP NAT ゲートウェイ
SNAT ポート数(パブリック IP 1 つにつき) 2,496 * FW 内部インスタンス数 ※1 64,512
関連付けられる パブリック IP の数 250 16
パブリック IP が使用される順番 基本的にプライマリから使用され、ポートが枯渇すると次が使用される ランダムかつほぼ均等に使用される
ゾーン冗長のサポート ×
価格 FW と FW のパブリック IP の価格 FW と FW のパブリック IP, NAT ゲートウェイと NAT ゲートウェイ のパブリック IP の価格

※1 Azure Firewall の内部インスタンス数は最低 2 となり、負荷に応じてスケールアウトします。

以上、ご参考になれば幸いです。


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